【管理栄養士監修】牛肉に含まれる栄養や効能を紹介!部位別の効果についても解説
焼き肉やローストビーフなど、食卓を豪華に彩る牛肉。カロリーが高いというイメージが強い食品ですが、実は栄養満点で健康にも嬉しい効能が期待できます。この記事では、牛肉の主な栄養素と部位ごとの栄養素、おすすめの食べ方などをご紹介します。
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たんぱく質?鉄分?牛肉に含まれる栄養とは

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牛肉には良質なたんぱく質とビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。それぞれどのような栄養素なのでしょうか。
たんぱく質
人間の体に含まれるたんぱく質は、約20種類のアミノ酸からできています。そのうち人間が体内で合成することができない9種類のアミノ酸を、必須アミノ酸といいます。牛肉にはこの必須アミノ酸がバランスよく、かつ多く含まれているため、良質なたんぱく源といわれています。
トリプトファン
トリプトファンというアミノ酸は、牛肉の赤身に多く含まれています。このトリプトファンから作られるセロトニンは、神経伝達物質として働いており、メンタルケアにも効果が期待できるといわれています。
カルニチン(リジン+メチオニン)
リジンとメチオニンから作られるカルニチンは、運動時の脂肪燃焼を促進する効果があるといわれています。このカルニチンも牛肉の赤身に多く含まれているので、運動を行うダイエットをしているなら、摂取すべきだといえるでしょう。
ビタミン
水溶性のビタミンと脂溶性のビタミンがあり、牛肉に多く含まれているビタミンは以下のものがあります。
ビタミンB6
ビタミンB6はアミノ酸の代謝に関わっています。不足すると皮膚炎などが起こりやすく、過剰に摂っても感覚神経障害に陥りやすくなるとされているため、適切な量を摂取する必要があります。厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、18~29歳の男性の1日におけるビタミンB6の推奨量は1.4mgで上限量が55mg、女性の推奨量は1.1mgで上限量が45mgといわれています。
ちなみに、牛肉に含まれるビタミンB6は生肉の状態で、和牛肉のバラ肉100gに対して0.16mg、比較的多いモモ肉の赤身でも100g中に0.38mgです。調理するとビタミンB6は減少しますが、減少しなかったと仮定して牛肉(モモ肉)だけでビタミンB6の上限の量を食べる場合、男性で14.4kg、女性で11.8kg相当を摂取する必要があります。フードファイターでもない限り上限量を超えることはないので、通常の食事をしている場合は、まず過剰症の心配はいらないでしょう。
出典元:「厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)
【参考】文部科学省:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ビタミンB12
ビタミンB12はアミノ酸や脂質の代謝を手助けする役割があります。不足すると悪性貧血や神経障害などが起こりやすくなるといわれています。18歳以上の男女ともに1日におけるビタミンB12の推奨量は2.4μgです。
出典元:「厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)
ミネラル
ミネラルは体内機能の調節・維持を担っています。骨を作ったりホルモンの生成に関わっていたりと、わたしたちの体を構成している大事な栄養素です。ナトリウム・カリウム・カルシウムなどがこれに当てはまります。なかでも牛肉で注目されやすいのは、鉄と亜鉛です。
ヘム鉄(ミオグロビン)
牛肉に含まれるミオグロビンというたんぱく質には、ヘム鉄と呼ばれる鉄が含まれています。このヘム鉄は体に吸収されやすいため、貧血にお悩みの方や月経で鉄分が不足しがちな女性は、ぜひ摂取したい栄養素です。
亜鉛
亜鉛は、味を感じる細胞の代謝に関わっており、不足すると味覚障害に繋がるとされています。
【管理栄養士監修】牛肉のたんぱく質はどのくらい?栄養素を補うおすすめの部位も紹介!牛丼やすき焼き、ローストビーフなど、日常からハレの日まで幅広く料理に使われる牛肉ですが、そこに含まれるたんぱく質の量はどれほどでしょうか?この記事では、牛肉の部位ごとのたんぱく質量を解説するとともに、牛肉に含まれる栄養素についても触れていきます。
牛肉の栄養は部位によって異なる

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牛肉に含まれる栄養成分は前述のとおりですが、これらの栄養は部位によって含有量が異なります。たとえばハツ(心臓)にはビタミンB1、B2が多く、レバー(肝臓)には鉄分が豊富に含まれています。タン(舌)にはタウリンが多く含まれており、肝臓の働きを助けてくれるといわれています。
また、バラ肉やサーロイン、リブロースなどの部位は高カロリーで、肩やももはその半分程度です。和牛か輸入牛かでもカロリーは異なり、全体的に和牛の方が高カロリーで、輸入牛は3/5程度のカロリーです。
【参考】文部科学省:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
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目的別におすすめの部位をご紹介
美味しく脂肪燃焼を目指したい方は低脂肪の赤身肉を
ダイエット中におすすめの部位は、低カロリーな赤身肉であるヒレやもも肉などです。脂肪分が少なく、たんぱく質が豊富な特徴があります。
とくに赤身肉で注目したい成分は先ほどもお伝えした「カルニチン」です。カルニチンは、脂肪からエネルギーを生産するために欠かせないアミノ酸の一種で、体内からも作られていますが十分ではないことや、歳をとるにつれて体内生産量は減ってしまうといわれているため、適度に食事からも摂れるとよいとされています。
貧血気味が気になる!そんな時は鉄分豊富なレバー
鉄分は血液に含まれるヘモグロビンの成分で、体のすみずみまで酸素を運ぶ役割があります。しかし、鉄分はカルシウムと並んで吸収率が悪い栄養素でもあり、とくに女性は毎月、月経から血を失っていることから不足しやすいといわれています。
そんな体の中で不足しやすい鉄分がレバー(肝臓)に多く含まれているのは先ほどお伝えした通りです。血液中に鉄分が少ないと貧血気味になりやすくなるだけでなく、血色の悪さや肌のくすみにも繋がりやすくなります。
鉄分を効率よく摂取するためにも体に吸収されやすいヘム鉄を含む食材を日々の食事に上手く取り入れるとよいでしょう。野菜に含まれる非ヘム鉄の吸収率は5%程度に対し、牛肉に含まれるヘム鉄の吸収率は20~40%といわれ、心強い味方になってくれることが期待されます。
コレステロール対策がしたい!そんなときは牛肉の脂身⁉
お肉といったら含まれている脂が生活習慣病の原因になりやすいイメージがあるのではないでしょうか?しかし、牛肉にもオリーブオイルでお馴染みの成分、「オレイン酸」が含まれていることをご存知でしょうか。
オレイン酸は、血液中の LDLコレステロールを低下させる働きがあるとされる不飽和脂肪酸の一つです。さらに、最近ではこのオレイン酸が牛肉の美味しさにも関わっていることが分かってきており、オレイン酸が高いものほど脂肪の味や香りがよいとされ、牛肉の価値を判断する指標の1つともなっています。
牛肉に偏らずさまざまな食材から体に必要な栄養素を摂り、健康維持に役立てていくとよいでしょう。
牛肉の栄養を考えた食べ方

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牛肉には栄養素が豊富に含まれていますが、その栄養をなるべく逃がさないよう摂取するにはどのように調理したらよいのでしょうか。
先ほども述べたとおり、和牛よりも輸入牛の方がカロリーが低いため、カロリーが気になる方は輸入牛の方がおすすめです。グリルで焼くようにすれば、余分な脂肪が落ちてさらにカロリーを抑えられます。お鍋や煮物に使用する場合は、水溶性の成分が流れてしまうので煮汁も一緒に食べるようにしましょう。
また冷凍肉を解凍する場合は、ゆっくりと時間をかけて解凍すれば、栄養素を保ったまま解凍できます。電子レンジは使わず、氷水や冷蔵庫を使ってじっくり解凍してみてください。栄養だけでなくおいしさも保てます。
まとめ
牛肉は単に高カロリーな食べ物ではなく、人間に必要な必須アミノ酸やビタミン・ミネラルが豊富に含まれています。適量を摂取することで、より健康的な生活が送れることでしょう。ぜひ、日頃の食事に牛肉を取り入れてみてください。
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プロフィール

監修者:横川 仁美
管理栄養士。食と健康・美容を繋ぐ「smile I you」代表。
メタボリックシンドロームの人へ向けた保健指導を中心に、ダイエットサポート、電話相談、雑穀販売等のカウンセリング等を通して、のべ2000人の方に、食のアドバイスに携わる。目の前の人の「今」、そして「これから」を大切にした食の提案を目指している。
また、健康食育シニアマスターやマイ穀スタイリスト、ヘルスケア栄養ライターの資格も保有。