【管理栄養士監修】「なす」と「なすび」の違いは何?日本の歴史を調査しました!
「なす」は日本で1000年以上も前から栽培されている歴史ある野菜ですが、実は「なす」と「なすび」には違いがあるなど、歴史的な奥深さがあります。この記事では「なす」の歴史や地域による呼び名の違いについて紐解いていきます。
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目次
「なす」と「なすび」は違う野菜?

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夏野菜の代表格のなすは、「なす」や「なすび」と呼ばれます。水ナスや米茄子、長茄子など品種による呼び名の違いはありますが、「なす」も「なすび」も同じ野菜を総称した呼び方なので、特に違いはありません。そのため、どちらで呼んだとしても間違いではありません。
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「奈須比(なすび)」の起源は奈良時代
なすはインドを原産とする野菜で、大きく分けると中国、朝鮮半島、東南アジアの各ルートで日本に伝わったとされています。文献から奈良時代にはすでに日本で栽培されていたことが分かっています。当時の茄子はとても貴重で、身分の高い人々しか食べられない野菜でした。平城京から出土した木簡には、粕漬けのなす「韓奈須比」が進上されたことが記されています。このことからも分かるように、元々の名前は「なすび」でした。当時の大きさは現在のもぎなすのように小ぶりで味も酸味があったのだそうです。
なすびの語源は諸説ありますが、主に知られているのが以下の3つです。
・夏に実がなることから「夏実」が語源であるという説
・酸っぱい味がしたということから「中酸実(なかすみ)」と呼ばれ、「か」が省略されるようになり転じてなすびになったとする説
・中国から日本に伝わった際に奈須比(なすび)とされたという説
ここで注目したいのが、なすの呼び方の差になっている語尾の「び」です。アケビやキビなどにも「ビ」がついていることから、植物名に通じるのではないかという説もあるようですが、実際のところ詳しいことは明らになっておらず、「び」の謎は残ったままです。
「なす」に変化したのは室町時代?
「なすび」が「なす」と呼ばれるようになった理由のひとつに、室町時代の女房詞(にょうぼうことば)からきているとする説があります。女房詞とは、宮中に仕える女房たちが使っていた隠語のようなもので、食物や衣服、また日常品について用いられ、上品で優美な言葉とされていました。この女房詞ですが、のちには将軍家に仕える女性から町家の女性たちにまで広がりを見せました。
「なす」という女房詞が登場するのは、室町時代の食事の調度などが置かれた御湯殿(おゆどの)に仕える女官が交代でつけた日記です。御湯殿上日記(おゆどののうえのにっき)文明一五年(1483)五月一五日に「松木よりなすの小折まいる」と記されています。このことから「なす」はなすびの女房詞として全国的に広まっていたことがうかがえます。
「なす」の起源は江戸時代とする説もある

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「なす」の起源が奈良時代ではなく、江戸時代とする説もあります。具体的には江戸時代になすを成功するとか、物事を成すという意味をかけて商人が売り出したことで縁起の良いものとして人気を博し、その呼び名が関東で一般的になったという説です。
これを裏付ける話がもうひとつあります。初夢に見ると縁起の良いものとして、一富士、二鷹、三なすび、という句があるのはよく知られていますが、この句が生まれたのも江戸時代です。こちらの由来も諸説ありますが、一説に一に富士山、二に愛鷹(あしたか)山、三に初なすの値段と、駿河国で高いものを並べた句であるとも言われています。この当時もなすは高価な食べ物のひとつで、徳川家には、なすの産地として有名な駿河で栽培されていた折戸なすが献上されていました。
また、江戸っ子が初物好きだったことは有名です。なすはカツオ、サケ、マツタケと並んで初物四天王とされていました。毎年、箱根の山々を超えて将軍家に献上される初なすへの憧れは、江戸での初物競争を激化させます。なすは1個1両、現在の貨幣価値でいうと約10万円で取引されていたというのですから驚きです。初なすを少しでも早く作るため、促成栽培の技術も発達しました。あまりに高値で取引されるため、幕府が統制令を出したこともあったようですが、初物と縁起物を好む江戸っ子の反骨精神に火をつけるだけであまり効果がなかったようです。
「なす」と「なすび」地域による呼び名の違い

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一般的には西で「なすび」、関東以北では「なす」と呼ばれることが多いと言われています。実際にJタウン研究所が2015〜2016年に行ったアンケートでは、北海道は「なすび」派が優勢なものの、東北や関東では「なす」が優勢です。「なすび」派は関西以西に広がっていて、中国、四国、九州も「なすび」と呼ぶ傾向があるものの 「なす」派も混在しています。地域によってはなすの呼び方で地元の人かどうかが分かってしまいます。
「なす」のおいしい食べ方
なすは煮物や焼き物として食べてもおいしい食材ですが、ここではなすの甘みを楽しめるグリーンカレーを紹介します。糖質を気にされている方はからだシフトの糖質コントロールグリーンカレーを使用してみてはいかがでしょうか。
材料は以下のとおりです。
材料(2人分)
からだシフト 糖質コントロール グリーンカレー 2パック
むきエビ 4尾
厚揚げ 1枚
なす 1本
ししとう 4本
赤パプリカ 40g
鶏ガラスープの素 小さじ1
水 200ml
ナンプラー 小さじ1
パクチー 適量
※糖質量<一人分>:6.3g/
1人分当り 糖質44.2%OFF(本品以外のグリーンカレーを使用した場合のレシピとの比較)
材料のうち、ししとうと赤パプリカはナス科の野菜です。紫色のなすがナス科ナス属の植物であるのに対して、ししとうと赤パプリカはナス科トウガラシ属という違いがあります。 ここで使用する野菜はすべて甘みがあるものなので、グリーンカレーの辛さを和らげてくれます。調理方法は次のとおりです。
作り方
1.背わたを取り除いたエビと、熱湯にくぐらせて油を抜いて1cm幅に切った厚揚を準備します。
2.なすはヘタを取り除き厚さ1cmの輪切りにし、ししとうは軸を切り落として斜め半分に切ります。
赤パプリカは一口大に切っておきましょう。
3.鍋にグリーンカレーと水・鶏ガラスープの素・ナンプラーを加えて火にかけ、ふつふつと沸いてきたら1・2を加えて中火で約5分煮込みます。
4.最後にパクチーをのせて、完成です。
グリーンカレーは、なすの甘みが活きる料理です。「からだシフト」を使用すれば、調理時間を短縮できますし、健康にも気を使うことができます。
まとめ
夏野菜として馴染み深いなすは、奈良時代に「なすび」として伝わった説や、江戸時代には縁起物として成すという意味をかけて「なす」とも呼ばれるようになった説があります。同じ野菜を指しますが、なすが伝わった西日本では元来の「なすび」と呼ばれ、東日本で「なす」と呼ばれるように地域差があるのも、そう言った歴史の影響があると言えそうです。こうした違いを楽しみつつ、なすを食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか?
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プロフィール

監修者:中野 照規
管理栄養士。
これまでに高齢者施設や病院で厨房業務や栄養管理業務に携わる。現在は病院給食の現場で調理補助兼栄養士として食事管理を行っている。
栄養学生時代の学外実習で食育の面白さを知り、卒業後もボランティアスタッフとして食育に関わっている。