【管理栄養士監修】登山中にバテない食事の摂り方

登山中は的確なタイミングでの栄養補給が重要です。また、登山に必要な栄養素を知っておくと効率的に体力を回復できます。山では食事が生死を握る可能性もあります。疲れてダウンすることのないよう、登山の食事についてしっかりと確認しておきましょう。

【管理栄養士監修】登山中にバテない食事の摂り方

登山に食事が大切な理由

登山に食事が大切な理由

登山の準備に忙しく、持参する食べ物にはあまり気を留めない方もいらっしゃるでしょう。確かに、登山では登山用の服装やザックなど、用意すべきアイテムがたくさんあり、食事まで考えている余裕がないかもしれません。
しかし、山中に売店があるわけでもなく、休憩所に食べ物が売っていない場合もあり、基本的に登山では食べ物を手軽に入手できません。準備を怠ると命に関わるケースもあるため、自分の食べる分をあらかじめ確保しておく必要があります。

さらに、登山中は動き続けるので、スタミナやエネルギーが激しく失われていきます。そのため、登山の全体を通して食事が重要な役割を担っていることを理解しておくことが大切です。山を登る際に必要なエネルギーを蓄える登山前の食事、継続的に行動するためのエネルギーを補給する登山中の食事、傷ついた筋肉を修復させるための登山後の食事、それぞれ目的が違うため、必要な栄養素も変わってきます。

登山中に何も口に入れないと山頂に辿り着く前に体力が尽き、命の危機にさらされてしまう可能性もあります。そうならないためにも、しっかりとエネルギー補給をしなくてはなりません。

登山前の食事と注意点

登山前の食事と注意点

山を登り始めたら自由な時間に休憩を取れるとは限りません。出発前に食事を欠かさず摂りましょう。

登山前の食事としておすすめなのは、ごはんやパン、麺類といった糖質を含む食品です。また、肉類の脂肪に含まれている飽和脂肪酸は、野菜などに含まれている不飽和脂肪酸よりもエネルギーとして使用されやすいため、エネルギー源として最適です。そのため、肉類に含まれている脂質も摂取しておきたいところです。これらの栄養素はエネルギー源として、登山中の体力を支えてくれます。ただし、登山の直前まで脂質中心の食生活を送っていると、胃腸に負担がかかってしまい、当日動きにくくなる可能性も出てきます。脂質を積極的に摂取するのは登山の3日前までに留め、徐々に糖質中心の食事にシフトし、登山の前日は消化によい食べ物をよく噛んで口にしましょう。登山直前の食事ではしっかりと水分を取り、体調に問題がないかを確認しておくと安心です。



登山中の食事と注意点

登山中の食事と注意点

登山中の最大の敵は、「シャリバテ」と呼ばれる現象です。シャリバテとは、エネルギーが不足して体力も判断力も奪われてしまう状態です。特に、高山でシャリバテになってしまうと、命取りになりかねません。
シャリバテを防ぐには、登山中でもこまめにエネルギーを補充することが肝心です。

登山中に食べるものを「行動食」といいます。行動食には歩きながら口に運べるものを選びましょう。糖質の補充には、おにぎりやバナナなどが適切です。そのほか、レモンなどに含まれるクエン酸は疲労回復に役立ちます。また梅干しは塩分補給に役立ちます。小さなクッキーやチョコレートはすぐに取り出して食べられるため、歩きながらの糖分補給に最適です。
さらにドライフルーツやナッツ類などもビタミンやミネラルを手軽に補給できます。小さなジッパー付き保存袋などに小分けして入れておくと便利です。また、小さなおにぎりをいくつも作っておき、こまめに食べるのもよいでしょう。歩いていると汗やエネルギーを消費する過程で水分が失われていきます。こまめな水分補給も大切なポイントです。たとえのどが渇いたと感じていなくても、意識的にミネラルウォーターやスポーツドリンクを飲むことが重要です。

行動食は「空腹になる前に食べる」のが鉄則です。人はお腹がすいたと感じた時点で、すでに体の中のエネルギー源が底をつきかけています。これは体力の限界が近づいているサインです。栄養が不足してしまってからでは、行動食をあわてて食べても間に合わないことも珍しくありません。長くても1時間おきには食べ物を摂るようにしましょう。

登山後の食事と注意点

登山後の食事と注意点

登山後の体力を回復させるためには栄養補給が必須です。できれば下山して6時間以内には食事を摂り、筋肉の疲労を回復させましょう。特に登山中に失われた糖分を補えるよう、炭水化物を中心とした食事で栄養補給を心がけてください。

ただ、登山後には達成感を覚えてしまい「すぐに食事をしよう」とは考えられない場合もあります。山のふもとから自宅まで長時間かかることも珍しくありません。「食事なんて後でいいから、すぐに帰りたい」と考える人もいるでしょう。
登山後に食事を摂る余裕がないときは、行動食を多めに作っておくのがおすすめです。登山中の予備にもなり、帰り道にも手軽に食べられます。たとえばゼリー飲料などの機能性食品であれば、登山後の移動中でも簡単に食べられるでしょう。

まとめ

楽しく登山を終えるには、登山前・登山中・登山後の食事が大切です。糖質や脂質、水分が不足すると登山中に体が動かなくなり、命の危機にさらされることも考えられます。脂質を摂取するのは登山の3日前までに留め、徐々に糖質中心の食事にシフトし、登山中はこまめに行動食と水分を摂り、登山後は失われた体力を回復させるための栄養補給を意識しましょう。

プロフィール

監修者:遠藤 莉菜

監修者:遠藤 莉菜

管理栄養士。
管理栄養士専攻の大学を卒業し、管理栄養士国家試験資格を取得。化粧品会社に入社し、エステの施術や化粧品・サプリメントの販売を行うが、管理栄養士の資格を活かすため転職。現在は特別養護老人ホームの管理栄養士として高齢者の食事管理を行っている。
また、日本栄養士会認定栄養ケアステーションにも在籍し、休日などは時間を作り地域の栄養相談や栄養セミナーなどさまざまな栄養活動のサポートを行っている。