【料理研究家監修】山芋と長芋の違いは?味や食感、ネバネバの栄養・効能も解説

とろろや山かけは日本人にとってなじみの深い料理です。よく混同される山芋と長芋ですが、実際には定義が違う食材です。品種によって味や食感が変わるので、それぞれに適した調理法を用いて楽しみましょう。また、いずれも健康にいいとされる「ネバネバ食品」の栄養・効能についても解説します。

【料理研究家監修】山芋と長芋の違いは?味や食感、ネバネバの栄養・効能も解説

長芋と山芋の違いは?

長芋と山芋の違いは?

「山芋」とは?

「山芋(やまのいも)」は、生で食べられる唯一の芋類「ヤマノイモ科」に属する芋の総称です。じつは「山芋」という品種は存在せず、「ヤマノイモ科」の芋全体を指しています。
ただ、地域によっては、野生種である自然薯のことを山芋と呼ぶ場合もあるため、そちらも間違いではありません。

ヤマノイモ科の代表例として、日本の山野に古代から自生する自然薯や、こん棒のような長芋、いちょうの葉のように扇状の形をしたいちょういも、げんこつのようなごつごつした形のつくねいもなどがあげられます。

「長芋」とは?

一方「長芋」は、山芋(ヤマノイモ科)を「ナガイモ種・ヤマノイモ種・ダイジョ種」に細分化した内の、「ナガイモ種」に分類される植物を指します。

一般的に長芋と呼ばれるのは、こん棒のような長くて太い形をしていて北海道や東北地方を原産地としています。そのほかナガイモ種に属する芋としては、イチョウイモ群のいちょう芋や、ツクネイモ群の大和芋などが有名です。そのほかに、ヤマノイモ種に分類される自然薯は、野生種として知られています。ダイジョ種にあてはまるのは九州のつくねいもや、ためいも(為芋)などの種類です。

山芋の品種の違いによる味・食感の違い

品種の違いによる味や食感の違い

長芋

長芋は粘り気が弱く、味わいも淡泊です。他のヤマノイモ科の植物に比べて水分量も多いので、すりおろしたものはさらさらした食感を楽しめます。

自然薯

粘り気の強い自然薯は、長芋と比べてずっと長い見た目をしています。目の細かいおろし器ですりおろした際のきめ細かいとろっとした食感が人気です。

大和芋

粘り気が強いことで知られている大和芋は、強い風味と甘さが特徴です。

いちょう芋

いちょうのような末広がりの形をしたいちょう芋も、大和芋と味や食感に大きな違いはありません。やはり、粘り気の強さが特徴的です。

山芋は生でも食べられる世界でも珍しい芋ですが、すりおろすのではなく、ただ切るだけでもおいしく食べられます。どの品種でもシャリシャリとした食感が楽しめるでしょう。

山芋の品種別の特徴と適した使い方

山芋の品種別の特徴と適した使い方

山芋にはたんぱく質の消化吸収を助けるぬめり成分のほか、ビタミンB群、ビタミンC、カリウムなどのミネラル、食物繊維がバランスよく含まれる健康食材です。老化防止、肌荒れ予防、疲労回復、便秘改善などの効果が期待できます。

大和芋・いちょう芋は「すりおろし」「短冊切り」がおすすめ

一般的に、大和芋やいちょう芋の使い方として愛されているのは「すりおろし」です。粘り気が強いので、いわゆる「とろろ」はごはんやそばにかけるほか、お好み焼きのつなぎとして混ぜる、海苔で巻いて揚げるなど、さまざまな用途があります。一方、短冊切りにして生で食べるのもシャリシャリした食感が心地よいので、サラダや和え物などでもよいでしょう。

粘度のゆるい長芋は「短冊切り」「揚げ物」に

水分が多い長芋は大和芋などに比べると粘度がゆるいです。生で短冊に切って食べたり、てんぷらなどの揚げ物にするといった、固形で食感を楽しめる食べ方もおすすめです。

自然薯は出汁と合わせて使うのが◎

長芋と比べ4~5倍もの粘り気を持つと言われている自然薯は、出汁などと混ぜて水気を多くするとおいしさが一層引き立ちます。ひげが気になる場合は、軽く火であぶって焼き切っておきましょう。なお、自然薯は野生種なのでスーパーでも土付きで売られていることが珍しくありません。タワシで強くこすり洗いしてから調理するようにしましょう。


ネバネバ食品が身体によいと言われる理由

ネバネバ食品が身体によいと言われる理由

山芋は、納豆やオクラなどと共に「ネバネバ食品」として人気の食材です。山芋の粘り気にはたんぱく質分解酵素が含まれているため、肉や魚と一緒に食べると消化を助けてくれます。また、血中コレステロールや過酸化脂質を取り除き、血流を促進してくれる効果も期待できます。成人病予防にも効果的で、健康食材とも言われています。

かゆみはなぜ起きる?

とろろを食べると口の周りがかゆくなり、アレルギーが出て困るという人もいるでしょう。この現象は、シュウ酸ナトリウムが含まれていることに原因があるとされています(諸説あり)。この成分は、針状の小さな結晶がとろろにすることでバラバラになり、肌に少し触れただけでも、その針が肌を刺激してかゆみとなって表れるのです。

シュウ酸ナトリウムは熱や酸に弱いので、皮をむいた山芋をすりおろす前に酢水につけておくことでかゆみを抑えることができます。また、手にも酢水をつけるとよいでしょう。すでにかゆみが出てしまった場合は、酢水やレモン水でかゆみが出た部分をよく洗うと、かゆみが軽減されます。

まとめ

山芋はさまざまな食感が楽しめます。栄養価も優れた食材であり、健康も美容もサポートしてくれます。特徴を知ったうえで適した調理法を意識すれば、よりおいしく食べられるでしょう。また、「食べるとかゆくなる」という人も、手軽に対処できる場合があります。食材の特徴を踏まえながら、より山芋の魅力を味わいましょう。

プロフィール

監修者:貞本 紘子

監修者:貞本 紘子

料理家。食育アドバイザー、幼児食アドバイザー。
岐阜県にて家庭料理、パン、ケーキの教室「colette」を主宰。
少人数制、初心者にも分かりやすく丁寧な指導で生徒数は6年間で述べ5500人。
「おうちご飯をもっと楽しく!」をモットーに活動中。